ワイヤレス技術で社会を変える
[研究室キーワード] アンテナ, シミュレーション, メタマテリアル, 電波
自動車や飛行機など様々なモノがインターネットに接続しています。これらは電波を用いて接続されています。また、電波は自動車などの自動運転技術で重要な役割を果たしています。これからの、より便利でより豊かな社会の実現には電波が重要な役割を果たします。
本研究室では、電波をより効率よく、よりスマートに使用するにどのように工夫すればよいかを様々な角度から検討しています。
こうした観点から、本研究室では電波の振る舞いを明らかにする研究、電波に対してこれまでにない特性を示す構造の開発など様々な研究を行っています。例えば、電波の振る舞いを調べるには、コンピュータ上でその振る舞いを再現できる事が望まれます。そこで研究室では、電波の高精度なシミュレーション手法の開発を行っています。これは、本研究室で行っている研究の一端ですが、興味のある方はぜひ研究室のHPをご覧ください。

シミュレーションで拓く電波の活用

電波のシミュレーションの一例

電波の測定装置を行う部屋
AI処理と映像符号化でロケフリーな社会を実現
[研究室キーワード] AI処理, ハードウェアアーキテクチャ, 映像符号化, 遠隔制御
AI・IoT技術の進展にともない、図1に示すように、現実世界をセンサーで捉えサイバー空間のコンピューティング能力によりAIを用いた学習による付加価値を加えてフィードバックするサイバーフィジカルシステムの高度化の開発が精力的に行われています。サイバーフィジカルシステムでは、莫大な映像データの伝送が必要となります。このため、ネットワークトラフィックの約80%以上が映像データといわれています。
本研究室では、フィジカル空間の映像データを可能な限り高解像度なままサイバー空間に効率的な伝送を実現するための莫大な演算量を持つ映像符号化規格のハードウェア化(図2参照)についての研究開発やフィジカル側での認識の高精度化の研究開発やサイバー空間からエッジへのフィードバック制御を低遅延で行うための低遅延伝送の研究開発を進めています。

図1 サイバーフィジカルシステム構成

図2 映像圧縮と演算量
1週間充電しなくて済む、高効率なスマートフォン
[研究室キ ーワード] 半導体, 新プロセス, 新材料, 誘電体材料, 電子デバイス
スマホを使っていたら、あ、電池切れ!よくあるシーンです。それがコンセントのある家の中だったらよいのですが、外出中だったら・・。もちろん、モバイルバッテリーという商品がありますから、それを持っていればよいのですが、せめて、数日電池が持ってくれればよいのに・・。そのために、私たちの研究室では、高効率で電子機器を動かすための材料研究に取り組んでいます。たとえば、コンデンサ。電気をためる能力がある素子ですが、どんどん薄くしていくと、同じ電気量を小さな電圧でためることができます。さらに材料を変えていくと、もっともっと小さな電圧で同じ電気量を蓄えることが可能となります。つまり、省エネルギー化が可能になる、ということ。
私たちの研究室では、こんな、電子機器内部に用いられている材料が、「もうちょっとこうだったら」に、電気電子工学はもちろん数学・化学など他の分野の知見も生かしながら取り組んでいます。

夢のトランジスタを作ろう!!!

各種材料作製装置

各種材料分析装置
未来のための高効率無線通信・ネットワーク
[研究室キーワード] 5G/6G, 無線ネットワーク, 無線通信, 無線通信のための信号処理, 無線通信のための機械学習・AI
スマートフォン、無線LANなどをはじめ様々な無線通信が身の回りにあふれています。さらに、第5世代移動通信システム(5G)のサービスが始まり、第6世代移動通信システム(6G)の研究も行われつつあります。
また、AIや機械学習ではビックデータとして多種多様な情報を集めることが望まれますが、その情報伝送の担い手として無線通信は重要な役割を担い、今後もその需要は増加することが予想されます。
本研究室では、未来の無線通信をより効率的に実現するため様々な研究に取り組んでおります。例えば、無線通信によるトラフィック、電波伝搬、ユーザの様子など様々な情報をビックデータとして活用し、高効率な無線通信及びネットワークを実現する技術の開発に取り組んでいます。これにより、さらなる高速伝送、多数ユーザの収容、高信頼な通信が可能となります。
海外の著名な研究者とも学生のうちから一緒に共同研究を行うなど、貴重な経験を持てることも本研究室の特徴です。

スマートな無線通信・ネットワーク

超小型無線機によるテラヘルツ無線通信

アンテナ・信号処理による干渉除去
スーパーコンピュータのネットワークを設計しよう
[研究室キーワード] スーパーコンピュータ, ディペンダブルコンピューティング, 超並列計算機
「京」や「富岳」など、国産のスーパーコンピュータ(超並列計算機)が世界一の性能を達成しているように、スーパーコンピュータに関する日本の研究能力は世界トップレベルです。スーパーコンピュータでは、非常に多くの計算機をリンクでつないで、ネットワーク(相互結合網)を構成し、計算機がお互いに連絡を取りながら、計算を進めていきます。ネットワークでつなぐ計算機の数は、大きなスーパーコンピュータだと1,000万台にもなるため、効率の良いつなぎ方(トポロジ)や連絡の取り方(ルーティング)を考える必要があります。
本研究室では、スーバーコンピュータの能力を引き出すネットワークについて研究しています。また、多くの計算機をつなぐと、ほとんどの場合、故障した計算機やリンクが存在します。そのような状況でも大きく性能を落とさずに計算を実施できるように設計する必要があるため、そのようなネットワークやルーティングについても研究しています。

トポロジとして、よく利用されるトーラス網。図は、3次元のもの。「京」や「富岳」は、「Tofu」と名付けた6次元のトーラス網を使用してます。

パンケーキグラフという美味しそうな名前のトポロジもあります。図は、4枚のパンケーキから作られた4-パンケーキグラフです。緑の点線内は、3-パンケーキグラフになっています。

水田でもセンサネットワークとして利用されるトーラス網
ナノテクと光・熱制御で、高効率電池を実現する
[研究室キーワード] エネルギー, エネルギーキャリア, ナノテクノロジー, プラズモニクス, メタマテリアル, 光・熱制御, 光検出器, 太陽電池, 水素・酸素生成, 熱電変換
ナノテクノロジーを駆使して光や熱を自在に制御し、より高効率な太陽電池や熱電変換デバイスの実現を目指しています。
エネルギー問題は、地球環境を守り、持続可能な社会を構築するにあたり重要な課題です。太陽電池などのエネルギーデバイスは、一部では普及していますが現在の発電効率は不十分で、電池のさらなる高効率化は喫緊の課題です。
久保研究室では、光や熱を自在に操ることのできる新規人工材料メタマテリアルをエネルギーデバイスに適用します。メタマテリアルはナノサイズのレンズのように光を集光し、増強された光を作り出します。この現象は太陽電池の光吸収を高めるため、電池の高効率化が実現すると期待できます。加えてこの技術は、ナノ領域の熱の吸収・伝搬・放出を制御することも可能とし、将来、低エネルギー消費半導体チップの実現を可能にします。

プラズモニック・メタマテリアルにより、光・熱の制御とエネルギー生成が可能に

ナノ領域に光を閉じ込めて、薄膜の太陽電池を高効率化

様々なナノテク装置を駆使してナノ構造体を作製
自然言語処理 言葉をあやつるコンピュータ
[ 研究室キーワード] データマイニング, 機械学習, 自然言語処理
コンピュータを使って、言葉の研究を行っています。専門的に言うと、人工知能の研究に含まれる、自然言語処理という研究分野です。大量のデータ(問題集)をコンピュータに与えて、規則性を発見し、新しい問題を解けるようにする技術、「機械学習」を使って実現していきます。当研究室では、言葉の意味を文脈によって理解させたり、欲しい情報を抽出したりするタスク、また、評判分析、推薦システム、文書分類など様々なタスクを対象に研究を行っています。
最近では、深層学習を用いた技術が人工知能の研究の標準となっており、当研究室でも盛んに利用しています。当研究室では日本語の処理を長年研究してきており、日本語ならではの特性について焦点を当てて研究しています。また同時に、この特性を意識しつつ、英語のテキストを用いたクロスリンガルな処理についても研究を行っています。
また、ある分野についてあまりデータがないときに、別の近い分野の知見を転用、併用して低リソースで精度の高いシステムを作成する研究をしています。例えば、新聞のデータを利用したブログのデータ用のシステムや、現代文のデータを用いた、古文用のシステム、日英のテキストを使ったクロスリンガルなシステムなどを作っています。



情報技術による人間の認知・運動機能の解明と支援
[研究室キーワード] VR・ロボットリハビリテーション, ブレインコンピュータインタフェース, 運動学習の計算モデル
本研究室では自律的かつ可塑的な特性を有する生物システムがいかにして合理的な知を実現しているのか?という問いに対し、工学的立場から数理モデル化を行いその機能解明を試みるとともに、開発した適応・学習のモデルをヒューマン・インタフェースとして実応用することを目指しています。
具体的には、没入型VRとモーション計測装置を組合せて仮想身体を思い通りに動かせるシステムを構築し、不慮の事故などで上肢を失った方が患う幻肢痛を緩和するシステムの開発や、脳波によるブレインコンピュータインタフェースでロボットや筋電気刺激装置を駆動して麻痺肢を思いどおりのタイミングで自発的に動かせる脳卒中リハビリテーションシステムの構築など、人間の認知・運動機能を情報技術により改変・拡張することで、そのメカニズムを認知心理学的に明らかにすることに取り組んでいます。

VR幻肢痛緩和システム

ブレインコンピュータインタフェースによる脳卒中リハビリテーション

強化学習による人間の運動学習の計算モデル
様々な情報を視覚的に効率よく伝える
[研究室キーワード] コンピュータグラフィックス, デザイン, 可視化
本研究室では、計算機による画像生成処理、特に人間に対する視覚情報伝達を目的としたコンピュータグラフィックス(CG)技術を中心に、研究を進めています。現代の情報化社会においては、膨大な情報の中から有益な情報を効率的に選択し活用することが必須です。そのためには「百聞は一見に如かず」と言われるように、情報を言語的表現だけでなく視覚的表現によって伝えることが重要です。私達は、CGを幅広い分野に応用し、効率的視覚情報伝達の実現を目指しています。
具体的には主に以下のテーマを研究しています。
(1)非写実的画像生成: 絵やイラストのように、特徴を強調したわかりやすいCG画像の生成
(2)映像処理:長時間の動画像情報を効率的に閲覧するための手法の開拓
(3)情報可視化:大規模情報を視覚的にわかりやすく提示する技術の追究
(4)デザイン支援:制作者の意図を反映したデザインを効率的に得るための支援技術
(5)形状処理:美しい曲線・曲面の生成制御

イラストの着色支援

大規模情報の可視化

静止画による動き情報の提示
視覚の人工知能で便利な未来を実現
[研究室キーワード] 3次元モデリング, コンピュータビジョン, 深層学習, 画像認識, 視覚情報処理
近年、画像の認識をするための深層学習ネットワークが提案されたのをきっかけとし人工知能が大きなブームになっています。本研究室では、視覚の人工知能を実現するためのコンピュータビジョンと呼ばれる分野の様々な研究を行っています。カメラやカメラをベースとした様々なセンサから得られる情報を用い、センサ情報の幾何学的な関係を推定するための基礎研究、新しい深層学習ネットワークの提案、深層学習や従来の画像処理手法をさまざまなシステムへ応用するための研究など、基礎から応用まで幅広く研究を行っています。実用的なシステムへの応用については、企業や本学農学部、工学部の他の学科の研究室などと共同研究を行っています。最近では、農作物の状態の認識、ドライブレコーダ映像解析などのテーマを実施しています。

対象の3次元構造推定のための類似画像の効率的な選択

トマトの状態の自動推定を行うロボット

本学科学博物館所有のアンティークミシンのディジタルアーカイブ
人工知能を用いて未来の画像診断を創る
[研究室キーワード] 人工知能, 信号処理, 医用画像処理, 機械学習, 深層学習, 計算解剖学, 診断支援
人体内部を撮影したCT像やMR像などは、病気の発見や治療に欠かせない医用画像です。病院では、大量の医用画像が日々撮影され、診断や治療に利用されています。
本研究室では、医療の現場で撮影される2次元や3次元の医用画像を人工知能を使って解析し、画像に含まれる重要な情報を抽出して医師に提示する、コンピュータ支援診断システムを開発しています。例えば、人体の体幹部を撮影した3次元のCT像には、がんなどの重要な疾患が写っていることがあります。その疾患を検出するためには、数百枚のスライス像を詳細に診る必要があり、医師への負担の増加が深刻な問題になっています。人工知能を使って異常が疑われる部位を画像から検出し、医師の診断を支援することで、負担は大きく低減します。また、将来は、人工知能の発展により、見落としの防止なども期待されます。
本研究室では、様々な医用画像の解析に人工知能を応用した、次世代の画像診断を実現するための研究を進めています。

CT像からの複数臓器の自動認識

胸部CT像の超解像

CT像からの転移性肝がんの検出
量子の力と人工知能を組み合わせ、量子状態を制御する
[研究室キーワード] ナノエレクトロニクス, ナノテクノロジー, 人工知能, 量子計算機
人間の身体や、世界・自然・宇宙など、すべては量子でできています。量子とは物質やエネルギーの最小単位であり、原子は量子から構成され、電子もまた量子です。現在のナノテクノロジーと呼ばれる技術は原子を1個単位で制御し、さらに、ナノエレクトロニクスでは電子を1個ずつ操作しています。しかし、原子や電子の制御はとても難しく、その理解には量子力学と呼ばれる新しい物理学が必要です。これらの研究は、量子計算機を現実のものとしつつあります。
我々の研究室では、原子や電子を1個ずつ操作する究極的な研究を行っています。それには、量子力学の知識や実験の技能・経験など、膨大な知見や技量を身に付ける必要があります。一方、近年、人工知能の性能も大きく向上してきました。そこで我々は、量子の世界の難しい研究を人間が行うのではなく、適切に設計された人工知能(マシン)に実行させることを考えています。
人工知能に支援された量子状態の制御技術が量子デバイスを自律的に作製し、量子計算機のような強力なコンピュータを生み出す。それがより高等な人工知能を表現し、より高度な量子計算機を生み出す。将来、人間ではなくマシンが研究活動を行うかもしれませんね。

研究室で利用している量子ゲート型量子計算機

研究室で作製している量子ビット構造(量子2準位系と量子状態読み出し用の単電子トランジスタ)

研究室で作製しているチップ
未来の通信を支える電磁波の究極制御
[研究室キーワ ード] 6G通信用のテラヘルツ波帯アンテナ, 熱マネジメントに向けた熱放射制御, 透明マント技術も可能な人工材料
私たちがスマホで利用している「4G」の次世代にあたる「5G」通信は、周波数28GHz(ギガヘルツ)帯を利用するとされています。当研究室で扱うのは、300GHzや3THzなどの周波数帯の電磁波で、通称 「テラヘルツ波」と呼ばれています。私たちは、企業とも共同で5Gの次の次くらいに実用化されると期待されている「テラヘルツ波帯」に用いるアンテナやそれに用いる新材料の研究に取り組んでいます。
研究テーマは、自然界には存在しない電磁的性質を持つ人工物質を使って、電波や熱の輸送を制御すること。メタサーフェス(超表面)と名の付いた新材料を用いて、未来の通信や発電を支える基盤技術の開発に挑んでいます。この研究の面白さは、まだ誰も知らない電波や光のフロンティアに漕ぎ出して、世の中を変えてしまう可能性があること。開発した新材料を実用化するのが私たちの目標です。
未来の通信や熱の制御を変えるようなアンテナや新材料を研究室から世界に向けて発信し、「電磁波の究極制御」に向けた学理の構築を進めています。

テラヘルツ通信

熱を操る
